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第4回 2000/09/13 SONY CDU948S を使った高品位 CD-DA の制作

[ 目次 ]
・最後の業務用ドライブ CDU948S
・高品質なCD-DA を焼くために
・目指せ CDU921S-PR!!(COLT921S-PR の制作)


高品位な CD-DA を焼くために

948S を使ったとしても、ただ無造作に焼くだけでは 948S の能力を十分引き出すことは困難です。高品位な CD-DA を焼くためには、以下に記述する各条件を出来るだけ理想に近づけることが大切です。

  1. 電源は、十分な余裕があるものを使う
    冷却に気をつける
    質の良いメディアを使う
    ※技術的根拠に乏しい、宗教じみた定説や俗説は、全て排除しています。
    えてして、オーディオ絡みの雑誌記事は、技術的な根拠を無視した奇妙な記述が目に付き、ユーザーを惑わす一因になっていますので、少なくともここでは出来るだけ客観的な記述をしようと思っています。
    オーディオ評論家諸氏もメーカーからお金をもらっている以上、苦し紛れでも、既存のものより秀でた部分を書かなくちゃいけないので、大変だと思いますが...。(^_^;

    ※948S のみに限らず、全ての CD-R ドライブで応用できる情報ですから、948S を所有していない方にも、大いに参考になると思います。(^o^)ノ電源は、十分な余裕があるものを使う
    理想的な電源とは、どんな場面でも適正な電圧と電流が、外来ノイズに影響されず、かつレベル変動することなく安定に供給されるものを指します。
    これさえ実現できていれば、CD-R ドライブの書き込み性能を十分に引き出すことが出来ると言っても過言ではありません。

    CD-R ドライブが使う電源電圧は、多くのコンピュータ・デバイスと同様に、直流の 12V と 5V の2種類です。
    12V は主にスピンドル・モーターの回転に使われます。従って、書き込み中に電圧が変化したり、供給可能な電流値が低下すると、回転数にムラが発生し、音質に大きな影響を与えるジッターの原因になることがあります。
    5V は、主に制御回路とレーザーピックアップに使用されます。従って、書き込み中に電圧が変化したり、供給可能な電流値が低下すると、制御回路中の IC やファームウェアなどが暴走したり、レーザーコントロールが不安定になったりします。また、レーザーの出力自体も変動するかも知れません。

    従って、コンピュータへ内蔵したり、外付けの SCSI ケースを別途用意して使う場合は、なるべく大きな電源(限度はありますが)を使いましょう。 特に、コンピュータへ内蔵する場合は、他のデバイスが沢山接続されていると、コンピュータ自体が慢性的な電源容量不足になっている場合があります。 この場合は CD-R の書き込みそのものが正常に出来ないこともあります。

    バルクの 948S を、別途購入した SCSI ケースに入れて焼いてみた CD-DA と、948S のリテール品であるロジテック LCW-7408 の外付けモデルにて CD-DA を焼いてみたものを比較してみたところ、何故かロジテックの方が音の厚みが薄く、軽い印象になってしまいました。 色々調べてみると、別途購入品に内蔵している電源は 50W/115V であるのに対し、ロジテックのケースは 15W/100V と、ロジテックの方がかなり貧弱であることが判明しました。948S の定格は 11W ですから、15W でも十分間に合うはずですが、やはり瞬時の電力供給という点では不十分なのかも知れません。そこで、ロジテックのケースからドライブを取り出し、別途購入品に入れて CD-DA を焼いてみたところ、音の輪郭がくっきりとして厚みを増したばかりか、今まで聞き取れなかった細かい部分の再現性までも向上しました。
    この事実は、出来上がった CD-DA の音質良し悪しは、電源の出来によって大きく影響されるということを表した好例と言えます。


    左が別途購入した SCSI ケースで、右がロジテック。
    ロジテックの電源が、見た目でもかなり小さくて、貧相。(^^;

    幸いにも上図左の別途購入品に内蔵されている電源は、比較的優れた使用感だったのですが、実際はなかなか良い電源を見つけるのは難しいと思います。
    また、コンピュータへドライブを内蔵する場合などは、コンピュータに搭載している電源に依存してしまうことになります。この場合は、コンピュータの電源そのものを大容量で高品質なものに交換する必要があります。

    コンピュータへ内蔵する場合:
    PC/AT 互換機では、現在の ATX 電源が 250W ならば、より大容量の電源に換装します。コンピュータの消費電力は上昇する一方で、最近では 300W 級の電源を必要とするシステムも珍しくありません。ここは思い切って 300W 以上の電源を使ってみましょう。品質面では、(1)出力電力の変動が少ないこと、(2)外来ノイズに強いこと、(3)自分自身もノイズをまき散らさないこと、などに注意します。あとは、静粛性も評価に挙げる方もいらっしゃるでしょう。定評のあるメーカーとしては、Seventeam, ENNERMAX, DELTA などの台湾製の他、Nipron という純国産ブランドもお勧めです。
    これらの他にも良いメーカーはありますから、自作系サイトなどでじっくりと情報収集して、最適なものを選んで下さい。当サイトのハマリモノ BBS でも、しばしば電源に関する熱心な議論が交わされています。

    外付けで使用する場合:
    冷却(後述)や電源のことを考慮すると、CD-R は外付けの方が理想的です。
    市販されている外付け SCSI ケースは、上の写真のような1ベイタイプから、4ベイ以上の大型タイプまで、沢山発売されています。この中でお勧めなのは、4ベイタイプです。内部が広いので、放熱には効果的です。でもそれ以上ベイ数が多いものは、CD-R だけで使うにはさすがに大き過ぎます。(笑)
    4ベイ以上のタイプでは、電源は 250W 以上が搭載されている場合が多く、CD-R ドライブには十分すぎるくらいの電力容量を得ることが出来ます。また、搭載されている電源に満足できない場合でも、電源の外形寸法やネジ位置が AT 電源と互換(というか、マザーボードへの電源ラインが無いだけで AT 電源そのもの)ですから、Seventeam や ENNERMAX といった定評のあるメーカーの AT 300W 電源に換装することも難しくありません。

  2. 冷却に気をつける
    CD-R ドライブは、書き込みを行うと大変に発熱します。一部のモデルでは、小型の排気ファンを内蔵しているほどです。発熱源として考えられるものとしては、レーザーピックアップ、スピンドルモーター、及びサーボモーターなどでしょう。
    948S も、天板が大変熱くなります。放熱のためか、直径 1.5cm くらいの穴が天板に無数に開いていて、基板が丸見えです。

    もし、この発熱をため込んでしまうとどうなるでしょう。
    冷却が不十分だと、高温による制御 IC やファームウェアの熱暴走によって CD-R ドライブが正常に動作しなくなる可能性があります。
    ですから、コンピュータ内部や SCSI ケースの排気には十分注意し、常に冷たく新鮮な空気がケース内部にスムーズに流れ込むような工夫が必要です。

    私は、既述した1ベイタイプのケースを愛用していますが、背面の排気ファンによって熱を外へ逃がしているので、問題を起こさずに済んでいます。(あと、あまり連続書き込みをしないこともありますが...。)

    理想的には、4ベイタイプの SCSI ケースに取り付け、ドライブ上部に十分な空間を確保しておきます。最低でも1ベイ以上の高さを開けておけば良いと思います。
    そして、ケース背面のファンで内部の熱気を排出します。

    但し、厳密に言うとこのファン自体もわずかながら回転数に同期したノイズをまき散らしていることがあります。(スペアナなどで周波数分布を測定すると分かります)まぁ、実用上どうといったレベルではないし、この程度であれば書き込みへの影響は皆無に等しいのですが、これすら排除したいと考えるのであれば、電源以外のファンを全て取り外し、冷却のために SCSI ケースのカバーを全開にするくらいしか方法はありません。えてしてノイズ対策は、ドツボにハマリやすいので、こだわりもほどほどにしておかないと、底なし沼です。(^^;

  3. 質の良いメディアを使う
    さて、ドライブ側の準備は整いました。次はメディアです。
    せっかく948S の使用環境を万全に整えても、焼き込むメディアの選定を誤ると、高品質な書き込みが出来ません。これでは 948S を使う意味がありません。

    私が実際に同じ条件で焼いたものを視聴してみて、良い結果が得られたものを挙げると、次のようになりました。なお、書き込み速度は全て2倍速です。
That's RICOH
CDR-74TY CDR-74MY CDR-63PY CD-R 74
MITSUI デッドストック SONY
MJCDR74MG CJPGS74N TDK OEM MCR-156A

That's 太陽誘電系:
SONY のドライブは、伝統的に太陽誘電のメディアをリファレンス(参考・基準)としているので、予想通り誘電メディアによる書き込みで、大変素晴らしい音質を得ることが出来ます。癖が無く、ソースに極めて忠実な再現性を持ちます。
ただし、惜しくも 74TY は既に生産が終了しており、流通在庫が無くなった後の代替品として、現行の 80min タイプがあります。80min タイプでも、まずまずの音質は得られましたが、現時点では 74TY を標準としたいところです。マスターグレードの 74MY との差は大変小さく、標準品でも十分に高い精度で生産されているのだと実感できます。

しかし、一番素晴らしいのは 63PY で、74min タイプよりもトラックピッチに余裕があり、線速も早いので読み取り特性が良く、私が評価した印象では、74MY よりも艶やかで生き生きとした鮮度を持った音を聞かせてくれるというものでした。今まで聞こえなかった細やかな音まで聞こえてくるといった、高い分解能も特筆に値します。
業務用メディアですが、アプリックスのサイトから通販が利用出来るようなので、地方の方も入手は難しくないと思います。

なお、製造元が太陽誘電のメディアとして、SONY、Philips、IMATION 他、多数が存在しますが、同じメーカーの製品でも、OEM 先によって若干特性が異なるようです。そのせいかははっきり分からないのですが、プロのレコーディングエンジニアの間では、Philips ブランドのものに定評があるようです。いずれにしても 74min タイプは流通在庫のみなので、早めに確保しておくのも手です。


フタロシアニン勢:
RICOH や MITSUI は、共にフタロシアニン採用ということもあり、音質的には同様の傾向を感じます。誘電系に比べて全体的にややドンシャリ気味で、中域が薄くなりがちですが、ごくわずかな差なので、それ程気になることもないでしょう。但し、MITSUI Pro だけは、さすがに一つ抜け出た分解能を見せてくれます。

ここで KODAK メディアが登場しないのを疑問に思う方もいらっしゃると思います。
実際に、KODAK の金と銀合金タイプの両方を試してみたのですが、私の耳には世間で言われているほど品位の高い音には聞こえませんでした。三井や RICOH よりも荒削りな傾向で、ドンシャリ感も強く、CMC や RiTEK といった台湾製フタロシアニンメディアと同等の傾向に聞こえます。レーベル面のコーティングも雑です。
従って、948S に対するお勧めメディアとしては、選出しないこととしました。

Mavica 用 8cm メディア:
8cm メディアで CD-DA を高品位に焼こう、と思う方はそれ程多くはないと思いますが、現在購入可能な 8cm メディアの中で、CD-DA の作成に耐えうる精度を持っているメディアは、このメディアくらいしかありません。
実際に焼いてみましたが、台湾製の 8cm とは一線を画す、素晴らしい質感を持った音です。これは、誘電の 63PY と同じ傾向です。


FUJI のデッドストック(参考評価):
TDK OEM のシアニンで、金反射層。948S が発売された頃とほぼ同時期のメディアを参考として焼いてみました。いや〜、なんと素晴らしい音でしょうか!
艶やかなバイオリンの響きは、古き良き時代の品質の良いメディアならではです。
鮮度が極めて高く、音が生き生きとしています。
やっぱり、ドライブと同じ時期のメディアとは相性抜群でした。


※注意
誤解無きように付け加えておきますが、これらの評価はあくまでも COLT-T が感じた個人的なものです。メディアの製造バラツキは当然ながらありますし、今回印象が良くなかったメディアでも、違うロットでは高品位な書き込みが出来るかも知れません。(とは言え、そんなにロットでバラつくんだったら、やっぱりそれなりの品質ってことですが...。(^^; )
いずれにしても、上記評価はあくまでも参考程度にとどめておいて下さい。鵜呑みにして、どのようなリスクや損失を負ったとしても、当サイトと COLT-T はいかなる責任も負いません。自分なりのリファレンスは、皆さんが個々に見つけだすべきだと思います。


COLT-T 的、メディアの選び方のコツ:
メディアの商品価値は主に、

性能:書き込み・読み出し時のエラーレートの低さ。読み出し時の互換性。
品質:材質強度、色素やコーティングの塗布、耐光性、耐経年変化。

などで判断できると思います。
この中で、最近の私が重要視する部分は、ユーザーではどうにもならない部分がしっかりしているかどうかです。
つまり、耐光性や経年変化に関する部分は、保存方法に気を配ることによってある程度延命させる事が出来ます。でも、もともとの基板精度(ポリカーボネイトの平滑性や偏芯など)、色素の塗布ムラ、及び品質のバラツキなどはユーザーではどうしようもありません。結局、記録されたデータの品質や寿命は、こういった製造レベルでの完成度によって、大きく左右されるので、これらの技術が高いレベルでまとまった製品を選ぶのがコツじゃないか、と思います。

耐光性は、高品位な書き込み精度と直接関係無いと考えられるので、ここではあまり重要視しません。あくまでも書き込み精度を第一にメディアを選定します。

とは言え、あまりに耐光性が低いと、普段の取り扱いにさえ過度に気を使わなければならなくなるので、少なくともフカミさんのサイトの BBS で行っている、SHINさんの耐光性試験で中程度以上の耐光性を有するもの、という条件も組み入れるのも良いでしょう。

さぁ、高品位 CD-DA を焼きましょう!
これで 948S を使った高品位な CD-DA を作成する準備は整いました。
出来るだけ良質な録音のオーディオ・データ(WAV ファイルや、AIFF ファイル)を用意しましょう。
メディアをセットして、ライティングソフトの書き込みボタンをクリック!
あとは、パソコンに触れず、じっくりと焼き上がるのを待つだけ。
さぁ、高品位 CD-DA の完成は目前です。


謝辞
CDU948S に関しては、自分自身の実験で得たノウハウの他に、当サイトのハマリモノ BBS にて、沢山の常連さんがそれぞれに体験したり、実験した結果を惜しみなくご報告して下さっており、そんな皆さんの貴重な情報も大いに参考にさせていただきました。また、CDU948S に関する大変詳細で興味深い情報をメールにて教えて下さった業界第一人者のMさん、レコーディングエンジニアのYさん、本当にありがとうございます。 全ての皆さんに、この場を借りて御礼申し上げます。m(_ _)m

 

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