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第5回 2001/02/11 超激安時代の CD-R メディア選び

[ 目次 ]
 まえがき
(1)2001年初頭のメディア事情
 ・とどまるところを知らない価格下落
 ・低下した品質への懸念
(2)高品質メディアの危機
 ・こうして品質は落ちていった
 ・耐光性は性能のひとつに過ぎない
 ・UM Doctor Pro の解析結果を盲信すべきではない

 ・63分メディアはなぜ良いのか
 ・[コラム] 雑誌特集の功罪 - チョウチン記事を見破れ!-

(3)いまどきのメディア選び
 ・良いメディアの条件
 ・現在の問題点と今後について


耐光性は性能のひとつに過ぎない
最初に書きましたが、我々一般ユーザーレベルでは、メディアの品質低下に気が付くことはあまり無いかもしれません。それには次のような理由が考えられます。

・一つ目は、とりわけ最近になって CD-R ユーザーになった方の場合、現行メディアしか使用した経験が無いので、昔の良質といわれるメディアと使用感の差を知りえないということ。
・二つ目は、対応可能な書き込み速度の飛躍的な高速化という、性能面の向上をアピールすることで一般ユーザーの関心を書き込み速度のほうへ引きつけ、品質低下に対する指摘をかわすことが今のところ出来ているということ。
・そして三つ目は、一般ユーザーの品質に対する関心が、耐光性と UM Doctor Pro による C1/C2 エラーの量という、2つにだけ集中してしまっているということ。

以上の三点が、我々一般ユーザーにメディアの品質に対する正しい認識が伝わっていないことの原因となっています。

確かに昨今の高速書き込みへの対応には、めざましい技術向上の成果であることに疑いの余地はありません。しかしながら、それは書き込み速度という性能面の向上を示してはいますが、既述した製造工程レベルでのコストダウンによる、相対的な品質低下をカバーするものではないのです。
耐光性についても同様のことが言えます。耐光性はメディアの経年変化に対する強度を示す重要な要素であることは確かです。しかしながら、耐光性が良くないといってもそれが直接、品質が悪いということにつながるわけでは決してないのです。耐光性が良くないメディアは、昼光などの強い光に当てないよう、保存方法に気を付ければ良いのです。

シアニン色素の場合、耐光性を向上させるためには皆さんご存知のように、耐光剤を混ぜることで過敏な光化学反応を抑えているのですが、この耐光剤は同時に書き込み時のレーザー光を減衰させてしまうという、マイナスの面も兼ね備えています。
関係者のお話によると、レーザー光が減衰すると、形成されるピットのエッジの切れが悪くなる傾向が見られるとのことです。
結果として、書き込み品位にも多少なりとも影響が出てきて、CD-DA の音質にも変化を生じるとのことです。ですから、メーカーとしては出来るだけ耐光剤は少なくしたいという意志はあるでしょう。ここのバランスは大変難しいところです。

ところで、なぜかあまり話題にならないことなので、あえて説明してみようと思いますが、太陽誘電のスーパーシアニンは、シアニン系色素でありながら、耐光剤が一切含まれていないという、驚くべき特徴を持ったシアニン色素であることをご存じでしょうか。
耐光剤が含まれないため、既述の耐光剤が書き込み時に与える影響もなく、極めて高品位なピット形成を実現できます。太陽誘電のスーパーシアニンがスーパーたる所以は、まさにこの部分に集約しているといっても過言ではないでしょう。
最近では太陽誘電製メディアの耐光性の低さを指摘し、不当に過小評価する声が少なくありませんが、逆に私は、耐光剤が無いにも関わらず実用的な耐光性を持たせている技術力に驚嘆するばかりです。 私は当初、スーパーシアニンは何がスーパーなのか、ただの名付けによるハッタリなのか、と軽く見ていたのですが、事実を知って見方を変えました。
太陽誘電は、この色素の特徴をもっとエンドユーザーにアピールしても良いのではないでしょうかね。営業部門が怠慢なのかな?(^^; かなり損をしていますね。

しかし繰り返しますが、メディアの本当の価値を左右するのは耐光性のみならず、既述した各製造工程での品質管理が重要なのは言うまでもありません。
かつて品質の良さでプロから高い評価を受けていたメディアを作っていたメーカーの多くは、今ではコストダウン・スパイラルに巻き込まれ一蓮托生、見る影もない有様になっているところが少なくありません。というか、ほとんど全てです。
これに関しては、プロの方からも同様の見解を得ています。


UM Doctor Pro の解析結果を盲信すべきではない
三洋の UM Doctor Pro というソフトは、同社製 CD-R ドライブの一部と、昨年同社が独自開発したバッファ・アンダーラン防止機能"Burn-Proof" を搭載した CD-R ドライブで使うことが出来る、メディアの簡易エラーチェックツールです。CD-R メディアの読み込み時に発生する、C1 エラーと C2 エラーをカウントし、グラフで表示するので、全周にわたるエラーレートの分布が分かりやすく、雑誌の CD-R 特集では頻繁に使われています。

ただ、あまりに分かりやすいデータであるが故、C1/C2 エラーが多めの結果が出たメディアに関して、諸説入り乱れている感があります。極端な話、C1/C2 エラーが多いメディアはダメなメディア、と切り捨てんばかりの論調さえ見られるのが気になります。
UM Doctor Pro では、C1/C2 エラーのカウント結果のみを表示していますが、メディアの品質はピットとランドのバランスやジッター値、アクチュエータ・サーボのフォーカシング量、訂正不可能エラーの発生量など、他にも沢山の測定項目があって、それらを総合的に評価しなければ正確な判断が出来ません。C1/C2 エラーの量というのは、それら沢山の測定項目のほんの一項目に過ぎないので、これだけでメディアの品質を決めつけてしまうのは、あまりに乱暴すぎると言えるでしょう。
そもそも、C1 エラーは「訂正可能なエラー」であり、最終的には消えてしまうエラーなので、実際はほとんど気にする必要はありません。C2 エラーは補完による訂正が行われると言われているので、DA の音質に影響を与える要素ではありますが、CD-R の記録時にはまず発生することはないものなので、目にする事自体ほとんどありません。

巷では、C1 エラーの量を音質の変化に結びつける論法も見かけますが、既述の通り最終的には完全に訂正されてしまうエラーなので、アナログ段において直接的な影響を引きずることは無いでしょう。これは、実際に CD-R の仕様を熟知している技術者からも、同様の見解を得ています。
ただ、確かに C1 エラーが直接音質に関与していそうな他の技術的な要因は想定できないと言う見方では、技術者の意見と一致を得ているのですが、複数の方の意見として C1 エラーが多いメディアでは音質が悪いという意見もあるようです。
これに関しての仮説ですが、C1 エラーの発生が多いメディアは、同時にジッターや SYM 値など他の値でも良い数値が出ないのでは、と思います。従って、それらジッターや訂正不能エラーなどによる、データ化けや欠落データの補完といった要素による音質変化が起こるため、あたかも C1 エラーが音質に変化を与えるように見えるのでは、と睨んでいます。つまり、C1 エラーが音質の悪化に「直接関与する」のではなく、音質悪化の要因が存在する可能性を「間接的に示唆する」もの、ということです。
とは言え、これが例えば1秒平均 20〜30 などとムチャクチャ多い場合では、エラー訂正時間がオーバーヘッドとなって、アナログ段にも影響が及ぶかも知れませんが、そこまでエラーが多いと、音楽用途に使うこと自体無理があるでしょうね。(笑)

更に UM Doctor Pro の問題点を指摘すると、訂正不能エラーは表示対象外であるということです。
本来ならば、訂正不能エラーの発生頻度を知ることのほうが重要なはずです。
Burn-Proof を故意に効かせた焼き方をしたメディアでは、Burn-Proof が効いた部分のギャップは、訂正不能エラーとして残ります。
しかし、UM Doctor Pro は、Burn-Proof を効かせたメディアをチェックしても、C1/C2 エラーのみ表示するだけで、肝心の訂正不能エラーの存在をユーザーに見せることはしません。しかし、業務用途のチェック装置を使うと、Burn-Proof が効いた部分は、訂正不能エラーとしてハッキリと現れることでしょう。
この UM Doctor Pro の不可解な仕様の裏には、自社の CD-R ドライブの書き込み性能の優位性は訴えたいが、Burn-Proof が効いた痕跡は見せたくない、といったご都合主義の一端を垣間見ることが出来ると思います。(~_~;

2001年3月3日加筆:
その後、ある方からの話で、BurnProof も BP3 になってからは、ギャップは E32 とはならず、BERL として検出されるようです。CD CATS のデータも見せていただきました。BP3 では、ギャップ長もかなり小さくなったと聞いていますから、改善されたと判断して良いかも知れません。 更に、メーカーの発表では、BP4 で遂にギャップゼロを達成(?)したとのこと。
ただし、BP2 までは以前としてギャップは E32 として検出されるそうなので、世代によって得られるデータが異なるため、多少の混乱を招く恐れがありそうです。従って、BPX とエラーの関係を語る場合は、今まで通りの注意が必要です。

 

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